クラウドファーストとは?


最近、クラウドファーストという言葉をよく聞くようになってきました。実際にはどのような意味なのでしょうか?

一般的には、クラウドファーストとは企業や自治体などが情報システムを構築する際、システム基盤としてクラウド導入を第一に検討するという考え方です。

市場ではクラウドという言葉やクラウドが提供され始めて既に10年以上が達ちます。

では、なぜ今改めてクラウドファーストなのか?クラウドやオンプレミスの現状などを含め解説します。

クラウドとオンプレミスの現状

まずクラウドと既存の方式であるオンプレミスの現状について把握する必要があります。
改めてクラウド、オンプレミスについて及び各市場の状況を確認してみましょう。

クラウド

クラウドとは、データセンタなどで集中管理されているサーバーにあるサービスを、インターネット経由で利用するシステムです。サーバーを自前で保有する必要はなく、クラウド事業者がハードウェアやシステムの運用を行います。一般的にはクラウド事業者と契約し月額などで費用が発生します。
まず日本のクラウド市場の現状を見てみます。クラウドにはパブリッククラウドとプライベートクラウド(企業内クラウド)がありますが、ここではパブリッククラウドのことをクラウドと呼ぶことにします。
クラウドの2019年度の伸長率は22.9%となっています(※1)。

シェアでは上位からAWS(Amazon Web Service)、Azure(Microsoft Azure)、GCP(Google Cloud Platform)とグローバルベンダーが強く、上位4位のうち3位を占める結果となっています。中でもPaaS(Platform as a Seavice)ではAWSが約50%という優位な結果となっています。4位5位にはFujitsu Cloud Service S5(富士通)、Cloud n(NTTコミュニケーションズ)による国産勢が顔を出すランキングとなっています。

(1※)IDC国内パブリッククラウドサービス市場
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46136120

オンプレミス

オンプレミスとは、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器等を自前で購入もしくはリース契約などをし、自社の情報システム建物内に設置、構築、運用することです。実際の機器やファシリティ費用、また運用にかかる人件費なども必要になり、管理・マネジメントなど一切の責任も自ら負う必要があります。クラウド登場以前はほぼすべてがこの方式でした。

オンプレミスの指標となるサーバー市場の現状を見てみます。
IDCJapan(※2)によりますと国内サーバー市場全体の2019年の伸長率は1.7%と非常に鈍い伸びとなっています。
シェアでは上位から富士通、NEC、日本ヒューレット・パッカード(HPE)、デル テクノロジーズ(Dell Technologies)と国産ベンダーが上位となり、クラウドとは異なる様相となります。

(※2)IDC国内サーバー市場動向
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46147220

クラウドとオンプレミスの比較

クラウドとオンプレミスをコスト、システム設計・構築、システム運用、システムの自由度の観点で比較してみましょう。

コスト(導入)

導入時のコストを比較すると、クラウドではオンプレミスで必要なハードウェア機器などの費用が一切必要ありません。あわせて設置、構築費用など様々な導入時の費用がクラウドではほとんど必要ないため、非常に安価になります。一方でオンプレミスではハードウェアなどの調達、設置、構築など導入時にはかなりの費用が必要です。

コスト(運用)

通常、クラウドでは日々のシステム運用はすべてクラウド業者側で行います。オンプレミスではサーバールームなどにハードウェアを含むシステム全体を設置し、運用を自前で行います。従ってシステムを担当する運用要員の人件費、場所代、電気代、などのファシリティ費用がオンプレミスでは必要になります。クラウドではこれらを自前で持つ必要がない分、クラウド業者に月額や従量課金などで支払うことになります。クラウドの方が運用すべてを委託し安価にも思えますが、従量課金でのシステム規模や長時間利用だったり、ケースによってはクラウド費用の方が高くなるケースもあり、十分な検討が必要です。

システム設計・構築(時間)

クラウドもオンプレミスもシステムの設計が必要です。クラウドの場合にはシステムリソース自体は既にクラウド上に存在し、ある程度決められた枠の中でシステム構成を選択し、クラウド上に構築していきます。オンプレミスの場合にはハードウェアの購入検討、調達などから始まるため、実際の物理的な構築作業を含めて長い時で数か月を要します。このためクラウドの方が短い時間で設計・構築ができます。

システム運用

クラウドではシステム運用は性能や障害なども含めすべてクラウド事業者が行い、責任も負います。一方でオンプレミスの運用ではすべて自前で行いますので性能問題や障害発生時にもすべて対応する必要があります。オンプレミスではサーバー環境の監視なども含め、運用体制なども組織やマネジメントも必要になるため、その分の手間はかかると言っていいでしょう。

システムの自由度

クラウドではシステム増強などシステム構成を変更する際にはクラウド業者側のメニューに沿って行うため自由度はある程度限られます。一方でオンプレミスの場合にはシステム構成の変更の際には、ハードウェア追加などもすべて自社の裁量で行うことが可能です。システムの自由度はオンプレミスの方が大きいと言えるでしょう。

日本でクラウドが進みにくい理由

日本では欧米に比べクラウド導入が遅れています。IT支出に占めるクラウド支出の割合ではトップの米国の14%に比べ日本は3%と先進国では最低となっています(※3)。

ここではクラウドが進まない代表的な3つの理由を解説してみましょう。

セキュリティに対する不安

特に自治体などの公共団体のシステムではクラウド化が進まないのが顕著と言われています。例えば自治体のシステムは大部分といっていい程、住民情報などの重要な個人情報データで占められています。重要なデータであるがゆえにオンプレミスで近くにおいておき管理をしたい、クラウド上に預けて本当に大丈夫なのか?万が一漏洩してしまった場合はどうなるのか?などの不安が根強いと言われています。

クラウド上にこれらのデータを預けることがまだ一般的ではない中、敢えて今までのオンプレミスを変えてクラウド踏み切るという自治体はまだ少ないようです。

自治体に限らず、あらゆる業種で顧客の個人情報を扱っています。セキュリティ事故によるブランド力の低下、競争力の低下などの不安が、クラウドに踏み切る足枷になっているのが現状です。

基幹系のクラウド化に対する不安

日本では欧米にくらべ、基幹系のシステムはスクラッチで一から構築するケースが多いとされています。基幹系パッケージ導入などの際も基本提供機能をそのまま利用するケースは少なく、カスタマイズをする比率がかなり多いとされています。理由は基幹系として重要なシステムなため、自社に使いやすくすると同時に、性能なども自ら保証しようとするためです。

クラウド化しても、オンプレミスと同様にシステムに修正を加えたり、性能問題の対応などができるのか?

といった不安があり、クラウド化に踏み切れないひとつの要因になっています。

コストに対する不安

前章のコスト比較で述べました通り、特に導入費用が安価なのがクラウドの特長です。ただ運用コストには留意する必要があります。クラウドでは月額や従量課金などで費用がかかるため、トータルで十分にコストシミュレーションをする必要があります。特に従量課金で大規模かつ長時間の利用が必要な基幹系システムなどの場合、クラウド利用料はかなりのコストとなりオンプレミスを上回る場合も出てきます。

こういったコストに対する漠然とした不安があるとされています。この不安を払拭するためにも、単純比較ではなく、人件費、場所代、電力代の費用なども含めトータルかつ詳細に比較しコストの不安を減じる必要があるでしょう。

(※3)Smarter with Gartner

Gartnerの国別のクラウド支出とその成長に関する調査は、クラウドの導入がどの国で速いペースで進んでいるか、どの国で遅れているかを示している。日本はクラウド支出の比率が最低レベルで、「抵抗国」に分類される。

クラウドを導入しやすいケース

クラウドには特性があるため、導入しやすいケースとそうでないケースがあります。

では実際にどういうケースではクラウドが導入しやすいかなどを解説していきます。

ハイブリッドクラウドでの導入

比較的規模のあるシステムは基幹系、情報系、新規事業系などいくつかの種類のシステムを持っています。前章で述べました通り、高いパフォーマンスやセキュリティが求められる基幹系システムはクラウド化はなかなか進みにくく、それ以外の情報系や、新規事業系はクラウド化を比較的しやすいと言えます。

ハイブリッドクラウドとはこういったクラウド化しやすいシステムをクラウド化し、基幹系はオンプレミスとして残し、それぞれを連携させてクラウドを導入することです。これによってそれぞれのシステムの特性からクラウド、オンプレミスのメリットを享受でき、全システムを無理にクラウド化することをせずに、最適なシステムを導入することができます。

中小企業における導入

例えばクラウドの従量課金などでは、大企業の大規模な基幹系システムなどはクラウド化によりコストメリットがでない可能性があります。

ただ中小企業ではシステムやデータの規模が大きくない分、基幹系も含めた全面的なクラウドの導入でコストメリットが十分に出るケースがあります。特にオンプレミスでの導入費用の初期投資は中小企業にとっては負担であり、まず最初は小さく導入してコストを抑えるというクラウドの特長は中小企業には向いていると言えます。

従って中小企業においては大企業に比べて、基幹系も含めたクラウド化は導入し易いと言えます。

クラウドファーストを推進すべき理由

これまで述べてきたように、クラウドとオンプレミスの特性がかなりあります。

最後にクラウドファーストを推進するべきいくつかの理由やポイントを解説します。

事業継続計画(BCP)と災害復旧(DR)対策

日本では特に自然災害の対策が必要です。通常のシステムではバックアップは常に行っていますが、過去の大きな自然災害のケースからオンプレミスのシステム自体が喪失し、バックアップデータはクラウド上に残っていても長期間事業を再開できないというケースも起こりました。これを避けるためにはオンプレミスでは自前でかなりの手間をかけBCPとDR対策をしっかりとする必要があります。

一方クラウドであればクラウド事業者により堅牢なファシリティなどBCP、DR対策がとられており、災害が起こったとしてもクラウドにアクセスすることにより早期に事業を再開できます。

セキュアなシステム

前の章でセキュリティへの漠然とした不安でクラウド化が進まない、という内容がありましたが、実際のクラウドは実はセキュアと言えます。一般的にクラウド事業者によるセキュリティ対策は、悪意のあるハッカー攻撃の対策なども含め高度なものまでしっかりとられています。

実際にはクラウドのセキュリティはオンプレミスよりも強固でむしろ安心して利用できるシステムと言えます。

攻めのICT活用

クラウドには容易な拡張性という特長があります。効率化の観点のみではなく、攻めのITという観点からはクラウドは向いていると言えます。事業が拡大する際には極めて緊急なシステムの拡大が求められ、ビジネスの機会を逃さないためにも容易な拡張性を持ったクラウドの検討は重要です。

またクラウドでは自前の運用が不要になる分、運用人員が余剰になりますが、その人員を本業に廻すという考え方ができます。

これらからクラウドは単なる運用コストの削減のためだけではなく、攻めの経営に貢献するための適用検討ができるというとも言えます。

まとめ

クラウドにはコスト削減だけではない、オンプレミスにはない大きな強みやメリットがあり、十分に検討する必要があります。今まではこれらがあまり認識されずにクラウド化への漠然とした不安などから、クラウドが十分に検討されてきていないというのが実情です。

クラウドファーストとは、必ずしもすべてをクラウドにする方向で検討すること、という意味ではありません。オンプレミスもケースによっては利用した方がいい場合もあります。

クラウドファーストとは、クラウドのメリットを十分に理解した上で、まずクラウドを必ず検討しましょう、というのが本質的な意味です。これらを理解した上で、これからはクラウドファーストを推進していかがでしょうか?